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CTCラボニュース 2018,12/04

Microfluidic Chipによる血中循環腫瘍細胞(CTC)測定

2018年11月30日までの共同研究実績が1,103症例に至りました。

Stage Ⅳの3症例におけるCTC計測数の例


 

Microfluidic Chipによる血中循環腫瘍細胞(CTC)測定

免疫チェックポイントの検出用として抗PD-L1抗体免疫染色による共同研究を開始しております。

PD-L1とは

CTCにおけるPD-L1の検出

 論文:[Scientific Reports (2018) 8,:2592][1]によると著者等は、免疫チェックポイント機能を阻害する抗体製剤であるPD-1およびPD-L1阻害剤を用いた近年の臨床試験では、転移性非小細胞肺癌(NSCLC)において有望な臨床結果が確認され、腫瘍生検で高いレベルのPD-L1染色を示した患者において、この効果がより良好であったことを報告しています。このことは個人向けに最適化された治療にとって重要であることから、患者の適合基準として腫瘍におけるPD-L1の発現を利用することに関心が集まっています。

 現在利用できるスクリーニングの方法は、侵襲的な腫瘍生検によるPD-L1レベルの組織学的悪性度のグレード分類です。しかしながら、生検は合併症を誘発するリスクが高く、また限られた腫瘍切片からしか採取できないことから、腫瘍の不均一性 (異種性) を全体的には反映していない可能性があることを、著者等は指摘しています。

 したがって、腫瘍循環細胞 (CTC) におけるPD-L1測定は患者のスクリーニングに役立ち、播種した腫瘍部位由来のPD-L1発現を測定することにより、組織におけるPD-L1生検の結果を補うことができると述べています。またCTC測定をスクリーニングの手段とするため、著者等はCTCを純度よく単離し、PD-L1で染色する方法を開発しています。CTCのPD-L1表現をモニタリングすることは、免疫治療の効果を正確に判断する薬剤応答の新たなバイオマーカーになり得ると著者等は指摘しています。

引用文献 [1]:Manjima Dhar, et al. (2018). Evaluation of PD-L1 expression on vortex-isolated circulating tumor cells in metastatic lung cancer, Scientific Reports 8, Article number: 2592.

 

 

■News

掲載誌: 医療と検査機器・試薬

掲載論文名:血中循環腫瘍細胞(CTC)測定・cfDNA濃度測定

       医療と検査機器・試薬,  2018,Vol. 41, No. 4,p. 326-333.

■ CTCと派生物質

(株)日本遺伝子研究所名誉研究所長 粕谷厚生(東北大学名誉教授)

まえおき
 ガンの診断や治療と深く関わる末梢血循環腫瘍細胞(Peripheral Blood Circulating Tumor Cell; CTC)と言う用語が研究論文はもとより、新聞でも時折見受けられるようになりました。原発巣或いは転移した腫瘍組織から遊離して血管に流れ込んだ細胞で、ガンの初期では1 mlの血液中に数個とごく微量ながら血流に乗って遠方の組織にまで浸潤し、増加しながらガンの転移や進行に支配的な役割を演じていると指摘されています。
 しかもCTCは遊離後も形態や性状を多様に変化させながら体内を巡るので単に個数を計ることに留まらず、刻々と変化して行く全体の様子をも捉えることによってガンの現状や進行状況を的確に把握し、高度な治療に役立てることが期待されます。測定は末梢血を採取するだけの非侵襲的な液体生検(liquid biopsy)になりますので、簡便なところが大きな利点です。
CTCは百年以上も前に900体を超える解剖の精査などに基づき提唱されました。以来弛まぬ研究が続き、ここ20年ほどにはナノテクノロジーによる材料、加工、計測技術が進歩し、磁性微粒子、微小流路、顕微分光などを活用した血液の高感度精密測定が可能になったことで、存在が漸く実証されました。
現在では様々な分析装置が考案され、採取された血液中から定められた判定規準に従ってCTCを選んで数え上げ、ガン患者の生存率(Overall Survival; OS)や無憎悪生存率(Progression Free Survival; PFS)と対応させた分析結果が多数報告されています。
僅かですが末梢血から分離された濃縮物を観察すると、形の整ったもともとのintactなCTC (iCTC)や循環腫瘍幹細胞(Circulating Stem Cell; CSC)と言われる細胞が先ずありますが均一ではなく(heterogeneity)、上皮間葉転換(Epithelial-Mesenchymal Transition; EMT)などに由来する亜形(CTC subtype)も多数見受けられます。また細胞が幾つか集まった塊(CTC cluster, Circulating Tumor Microemboli; CTM)や、個々の死滅 (apoptosis CTC; aCTC, Necrosis) 或いは損傷、分解により生ずる破片(Granular CTC, Tumor Cell Fragment; TCF)、粒(Tumor Micro-Particle; TMP) やDNAの断片 (循環腫瘍DNA、circulating tumor DNA; ctDNA, cell free DNA; cfDNA)、も大量に見つかっています。そのほとんどがガン細胞から派生した物質でありOSやPFSとに強い相関を示す測定結果が得られています。
 これらCTCは基よりガン細胞から多岐に派生して行く物質を全体的に眺めていると、ガンの転移に関わる様々な過程の端々が物質それぞれに見え隠れしているような気がして来ます。このような多様な変化を個人毎に捉えれば、症状に合わせた具体的な診断や治療に役立てることが可能になると考えます。となれば、もともとのCTCのみを計測対象とするこれまでの分析は“木を見て森を見ず”の感があります。またCTCが希有であることを考えると、測定対象を広げることによって検出の取りこぼしや見誤りを防ぎ、測定量も増えて精度や信頼性の大幅な向上にも繋がり非常に有利になります。

 実際に測定対象をCTCに限らず、ガン細胞から派生する物質を広く含めた分析例について幾つか論文紹介します。それぞれ測定対象と結果を抜き出して部分的に概訳してありますので、詳しくは原著を参照下さい。

「CTCと派生物質」はこちら

 

■News

CTCラボニュース 2018,7/27

当CTCラボの微小流路デバイス法は、CTCと白血球の変形特性が大きく異なることに基づき原発巣から漏れ出たCTC(Type.1)と、EMT(転移能を獲得した悪性の腫瘍細胞)の可能性があるCTC(Type.2)を測定するものです。「血液の固定処理をしなかった」場合、癌細胞の中には7.5µmから8µmのPore channel(細い孔)をすり抜けてしまう細胞があるという理由により、血液の固定処理を行うことにしています。特にmessenchymal like cellのような線維芽細胞様の形態の細胞のほとんどが、5µmのpore channelでも簡単にすり抜けてしまうことがわかりました。

図1:Pore channelをすり抜けたMessenchymal like cellのcluster

当初は走査型電子顕微鏡でCTCを見ながら、この細胞の触手を固定できないか?さらには細胞の形態を損なわない固定処理はないか?と思い巡し、開発を始めました。試行錯誤を繰り返して得られた実験結果から、現在は定められた固定液、濃度、時間によって厳密に固定処理を行っております。Micro流路chipの長所は、3Dであることにより、CTCのviabilityの強弱が明瞭に観察できることです。逆に細胞内の観察においては、2D解析よりも劣るという欠点もあり、稀に核が検出されにくい場合もあります。癌細胞を風船に例えるとしましょう。膨らませたばかりの風船は「みずみずしい、張りのある、正にviabilityの高い(強い)Intactな細胞」を表現していると思います。時間が経つにつれ、風船は徐々にしぼんでいきます。しぼんだ風船になぞらえて、私たちはこの状態をviabilityの低い(弱い)細胞と表現しております。実際に多くの癌患者様の治療後のCTCは、Viabilityが低い状態であり、intactな細胞から徐々にintactではない細胞へと変化していくのが見られます。逆に、viabilityが低い細胞から急にViabilityの高い細胞へと変貌した姿に遭遇する場合もあります。さらには、終始一貫してviabilityの変わらない細胞もあります。それはmetastable cell(Cytokeratin陽性とVimentin陽性のハイブリットタイプ:転移の準備段階の細胞と思われている)やmessenchymal like cell(間葉系細胞で線維芽様の形態を見せる)です。これらの細胞は常にViabilityが高く(強く)、共同研究による実験数は10例程で未だ少ないのですが、Pore channelで捕捉し回収した細胞を培養したところ、その増殖力には凄まじいものを感じております。このたび、共同研究に参加いただいた多くの先生方のご支援により、一つの節目となる1000件に到達することができました。当研究室では、さらに一層の開発を進めておりますので、その一部をお伝えいたします。すでに第3次共同研究募集により、PD-L1抗体を用いたCTC測定が始まっております。またCTC測定において、CD45が非常に強く発現しているMDSCと思われる細胞が偶然に検出されたため、MDSC測定の準備も進めております。

図2:一般的に見られるCD45強陽性のリンパ球

図3:上記リンパ球の10倍以上の蛍光強度を示す細胞(MDSCが疑われる細胞)

 

CTCラボニュース 2017,10/20

上皮-間葉移行(Epithelial-to-Mesenchymal Transition 「EMT」)とphenotype
上皮様(epithelial)から転移可能もしくは準安定(metastable)細胞を経て間葉系(mesenchymal)の細胞へ変化しています。

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