CTCラボニュース ハイブリッドE/M状態の検出例
ハイブリッドE/M状態の検出例
弊社CTCラボでは2015年より実施しているCTC測定において、上皮系マーカー(Cytokeratin)と間葉系マーカー(Vimentin)の両方が染色された陽性の細胞を、 上皮系(Epithelial)と間葉系(Mesenchymal)の中間状態(ハイブリッドE/M状態、Metastable)として報告しております。 現在、共同研究先では、このハイブリッド状態が検出された被検者において、転移能力が高く治療抵抗性が現れるといった相関があるのではないかと注目されております。
【弊社CTCラボにおけるハイブリッド状態の検出例】
◆マイクロ流路デバイス Ver.1(Celselect Slide Version 1.0)による検出例
◆新しいマイクロ流路デバイス Ver.2(Celselect Slide Version 2.0)による検出例
【ハイブリッド状態に関する代表的なレビュー】
以下のレビューは、ハイブリッドE/M状態と、それが「がん」の可塑性(Plasticity)、幹細胞性(Stemness)、転移、治療抵抗性にもたらす影響について詳細に論じています。 これらのレビューはCytokeratin陽性/Vimentin陽性という「中間型」の細胞集団の意義を理解するために役立つものと思われます。
(1)
“Epithelial-to-Mesenchymal Transition in the Light of Plasticity and Hybrid E/M States”
Laura Bornes, et al. Journal of Clinical Medicine. 2021 May 29;10(11):2403.
EMTの役割に関する長年の議論を、可塑性(Plasticity)とハイブリッドE/M状態という観点から再検討し、これらの概念が「がん」の転移、幹細胞性(Stemness)、 治療抵抗性に対する理解をどのように変えたかを包括的に論じています。
(2)
“Hybrid Epithelial/Mesenchymal State in Cancer Metastasis: Clinical Significance and Regulatory Mechanisms”
Tsai-Tsen Liao, et al. Cells. 2020 Mar 4;9(3):623.
ハイブリッドE/M表現系が「がん細胞」に高い可塑性(Plasticity)を与え、それが転移を進行させる上でストレスの多い環境に適応することを可能にするメカニズムについてレビューしています。 幹細胞性(Stemness)、集団遊走(Collective Migration)、および治療抵抗性との関連性についても深く掘り下げています。
(3)
“Implications of the Hybrid Epithelial/Mesenchymal Phenotype in Metastasis”
Mohit Kumar Jolly, et al. Frontiers in Oncology. 2015 July 20; 5:155.
EMT/METのコア制御ネットワークがどのようにEpithelial(上皮系)、Mesenchymal(間葉系)、ハイブリッドE/M状態の3つの明確な表現系を生み出すかを理論的な枠組みで提示し、 『ハイブリッドE/M状態が悪性度の高い「主犯格」として機能している可能性が強い』と論じています。